悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~
 今生の両親は娘に甘く、私が嫌だと言えば無理にやらせようとはしない。
 逆に、やりたいと言ったことに関してはできる範囲で協力してくれる。
 ……たとえそれが、公爵家の娘らしくないことでも。
 由緒あるラティウス公爵家がそれでいいのかな、と感じることもある。
 でも、私はそんな両親に甘えていた。
 
 甘いことを除いても、社交の場へ引きずりだされない理由は2つあると思う。
 1つ目は、跡取り息子である兄が、そういったものをこなしていること。
 2つ目は、私にはジークベルトという婚約者がいること。
 嫌がる私を無理やり外に出さなくたってラティウス家はやっていけるし、ジークベルトがいるのだから、私のお相手を探す必要もない。
 ……そうやって理由を探してみたけれど、結局、1番は娘に甘いからだと思う。

 元は庶民だったから合わない、堅苦しくて嫌なだけなら慣れてしまえばよかったのだろうけど、他にも、そういった場に出たくないわけがあった。
 だから、シュナイフォード家でお茶会を開くと言われてドキっとした。
 婚約者の家で開くんじゃ、私が不参加ってわけにはいかないなって。

「君がこういった催しを好きじゃないのはわかってるんだけど……。僕の家で開くのに、婚約者不在はあまりよくなくてね。それから……君に会いたいって人も、何人か」

 ジークベルトがどこか申し訳なさそうに言う。
 わがままを言って逃げているのは私。
 ジークベルトは何も間違っていないし、悪いこともしていない。
 ここで嫌だと主張し続けるのはダメだ。

 12歳になった今も、私は自分が誰なのかよくわかっていない。
 でも……アイナ・ラティウスはこの人の婚約者なんだ。
 なら、返す言葉は決まっている。

「……参加します、ジーク」
「いいのかい?」
「うん。私はあなたの婚約者だから」

 私がそう言えば、ジークベルトはほっとしたような顔をしたあと、嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、アイナ」
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