ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
キャンプファイヤーが始まる前にトイレに行こうと席を立った私。
会場からは少し離れた所のトイレに行き、用を済ませた後の帰り道で何かの植物の蔓に足が引っかかってしまい、派手に転けてしまった。
「……っ痛!」
膝と腕を強打し、地面に倒れたまま動けなくなる。少しでも手足を動かそうとすれば、痛みがたちまち襲ってくる。
周りには人の気配なんかはまるでなくて、どうしたらいいか分からなくて不安になっていた時───
「雨宮さん……?」
私の名字を呼ぶ、聞き慣れた声が聞こえた。
「犬飼、くん……」
私は声のした方向に視線を向けた。そこには、目をまん丸くさせた犬飼くんがいた。
私の今の状況を把握した犬飼くんがすぐに駆け寄って来てくれる。
「大丈夫!? 足から血が出てる、それに腕からも……!」
犬飼くんはパニックになった後、平静心を取り戻して、私が起き上がるのを手伝ってくれた。
そして、ポケットから消毒液やら絆創膏やらを取り出して手慣れたように処置してくれる。
まるで私が転ぶのを初めから分かっていたかのような準備の周到さに驚いた。
「……ありがとう。それと、迷惑かけてごめん」
「いいんだよ。それに、いざという時の応急処置グッズ、役立ったしね」
犬飼くんは笑顔でそう言った。
「雨宮さん、歩けそう? もし無理なら俺がおぶっていくけど」