ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
そう言って眼鏡をかけ、私と距離を詰めてきた犬飼くん。初めから丁寧に解説してくれるけれど、私はその距離の近さに緊張して全く集中できない。
ちらっと犬飼くんの横顔を盗み見ると、見たことがないくらい真剣な表情をしていた。
眼鏡をつけたら、格好良さが増すな……。
なんてぼんやりした頭で考えた時、
「雨宮さん、そんなに見つめられたら恥ずかしいんだけど……。解説、ちゃんと聞いてた?」
頬を赤らめた犬飼くんが私と目を合わせてそう言った。
「……っ」
「もしかして、俺のこの顔に見惚れてたとか?」
綺麗な唇がいたずらに弧を描いて、私をからかうように見つめてくる。何も反論しない私に、犬飼くんの表情が次第に驚きに染まっていって……。
「ガチ、か。え、本当に……? もしそうだったら俺、嬉しすぎるんだけど」
「ち、違うし……! ただ、眼鏡してるの珍しいなって思ってただけ……!」
真っ赤な顔で反論したってもう手遅れだと分かっている。分かっているけれど、一瞬でも犬飼くんに見惚れていた自分を認めたくなかった。
「へー、そーなんだ」
だめだ、全く信じてもらえてない。
「そ、そうだよ。それより早く、勉強再開! ここ、もう一度教えて?」
私は必死に犬飼くんを勉強をする方向に引っ張り、何だか甘々になりかけだったムードを壊すことに成功した。