ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


 私に抱きついて、すぐに体の力を抜き全体重の重みをかけてきた迷惑者。


 私の口からそんなうめき声が出て、バッと手で口を抑える。私のものではないような声が漏れるのは、決まって“この時”だけ。


 後ろから私の肩にぎゅっと腕を巻き付けて、物凄い力で抱きついてくるその人物は、ーーーー。



「ちょっと凛大(りた)…っ、離れなさい!」


「ゆい久しぶり〜〜っ!もう一生離してやんない」


「……はぁ、帰ってきたと思ったらこれって、一体どういうことよ」



 私はこめかみを押さえ、盛大にため息を吐いた。きっとこれが漫画だったら、今私の頭の上にはズゥーンとした縦線が大量に引かれていると思う。



「あははっ、凛大くんの子犬っぷりは今も健在だねー」



 私がめちゃくちゃ困っている間も、杏月はそんな凛大を見て楽しそうに笑っている。


 こんの…っ、杏月、笑ってないで早くこいつを私から剥がしてよぉーーー!私はそんな杏月を恨めしく思いながら、ギラッと鋭い視線を杏月に向けた。


 何度も何度も「離して」と怒った口調で言っているのに、私に抱きつく本人は全く聞く耳を持とうとしない様子。

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