ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「だめ、ちゃんと測って」
「……」
私はむすーっとした顔をする。
犬飼くんはそんな私を困り眉で見つめている。
……これじゃ、親と駄々をこねている聞き分けのない子どもじゃない。
途端にこの状況が情けなくなって、私は言われた通り熱を測った。
ピピピッ、ピピピッ。
体温計をさっと取り出し、ちらっと見たふりをしてすぐに入れ物の中にしまった。
「え、なんで俺に見せてくれないの?」
「……」
「……雨宮さん?」
「37.8℃」
私は真っ赤な嘘をついた。本当は36.4℃の平熱。
だけど、これは犬飼くんを追い出すための嘘だ。私は悪くない。
「わ、大変。しっかり安静に過ごさないと!」
犬飼くんは私の言葉をすんなりと信じた。