ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「……っくは」
犬飼くんは苦しそうに顔を歪め、心配になるくらい咳き込む。
その光景を見て、私はすぐにでも出て行こうとした。
犬飼くんを助けなきゃと思った。
それでも、私の足はその場にくっついてしまったかのように動かなくて、情けないくらい震えている。
「もしお前が〝あのこと〟忘れてるってんなら、その馬鹿げた脳みそ、今すぐに洗い直した方がいい」
リーダー格のような男が憎みを孕んだ声で言った。
犬飼くんは今も苦しそうに肩で息をしている。
男たちが路地裏の奥へと去っていった後、私は緊張の糸が切れたように地を蹴って犬飼くんの元に駆けつけた。
「っ、犬飼くん! 大丈夫!?」
顔だけじゃなく、体中に殴打された形跡がある。
その体に触れることさえためらわれるほどに、黒ぐろとしたあざが広がっていた。
苦しそうに息をしながら、うっすらと目を開けて私に視線をやった犬飼くん。