ワケありモテ男子をかくまうことになりました。


「……っ、はぁ、あ、ま宮さん、なの?」

「うん、そう……っ。ごめん、私……助けてあげられなくて」


犬飼くんが傷つけられていくのをただ見ていることしかできなかった私は、最低野郎だ。

犬飼くんは戸惑った目で私を見ている。


「あ、ま宮さん、は悪くない……っから、謝んないで」


切れた唇から流れる血を拭い、自力で立ち上がろうとする犬飼くんに自然と手が伸びる。


「いい、自分で起き上がれる、」


犬飼くんは私の手を制して、時間をかけて起き上がった。


見てしまったからにはもう気にしていないふりなんてできなくて、私は感情の動くままに口を開いた。


「っねえ、さっきの人たちは誰? もしかして、先週の怪我もあの人たちにやられたの……っ?」


情けないくらいに声が裏返る。


犬飼くんの瞳が動揺したように一瞬だけ揺らぐ。

そして私から目を逸らして、なんて言おうか迷っているような表情を浮かべた。


「……それ、は、」

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