君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「先生おはようございます」

 背後から学生に話しかけられて、俺は物思いから顔を上げた。
 一時限目開始の時間が迫っていた。

「ああおはよう」と返したのをきっかけに、なに食わぬ顔で入室し、急いで準備を始めた。

「先生、準備のお手伝いしますか」

 さきほど会話していた男子学生たちが、心なしか気まずそうな顔で手伝いに来た。
 手伝いの申し出はいつも有難く受けていた。だが、

「いやけっこうだよ」

 とつい冷ややかに拒絶してしまった。

 他愛ない会話につい影響されてしまったというのか――俺はいったい、なにをこんなに苛立っているのだろう。


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