君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
※
その夜の帰宅は、八時を過ぎていた。
重要な仕事があったわけではない。
美良と顔を合わせたくなかっただけだ。
玄関をそっと開けると、彼女が笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさい。お仕事お疲れさまでした」
「ああ」
彼女が鞄を受け取ろうとするのを無視して、さっさとリビングへ向かう。
結婚する以前から世話になっているハウスキーパーの仕事ぶりは今日も完璧で、白系の家具家電で統一したリビングは、なんの遜色もなく綺麗に整えられている。
だがそこに、黄色い花柄の愛らしいマグカップに、俺を待っている間に勉強をしていたのだろうか、ピンク色のペンとクリアファイル。
代り映えのしない無色素な空間に、彼女の色が混じっている。
その夜の帰宅は、八時を過ぎていた。
重要な仕事があったわけではない。
美良と顔を合わせたくなかっただけだ。
玄関をそっと開けると、彼女が笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさい。お仕事お疲れさまでした」
「ああ」
彼女が鞄を受け取ろうとするのを無視して、さっさとリビングへ向かう。
結婚する以前から世話になっているハウスキーパーの仕事ぶりは今日も完璧で、白系の家具家電で統一したリビングは、なんの遜色もなく綺麗に整えられている。
だがそこに、黄色い花柄の愛らしいマグカップに、俺を待っている間に勉強をしていたのだろうか、ピンク色のペンとクリアファイル。
代り映えのしない無色素な空間に、彼女の色が混じっている。