君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 まだ固く瞼と唇を引き結んで規則正しい寝息を立てているその秀麗な寝顔を見つめた。

 ずっと、ずっとこの時間が続けばいいのに。

 『今だけは、酒のせいにしてもいいか』

 どこか自分に言い聞かせるように言って、聡一朗さんは理性を打ち捨てた。

 『今だけは』

 きゅっと胸が痛んで、私はそっと聡一朗さんの指に触れた――すると聡一朗さんが反応して、私の手を握り返した。

 起きている?

 そう思ったけれど、寝息は変わらず深い。

 どうして――。

 私は訴えるようにその熱い肌に頬をすり寄せた。

 あんなに激しく、こんなに切なく求めてくれているのに。

 どうして「今だけ」なんて言うの――。
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