君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「聡一朗さんは私を不憫に思ってくださって協力してくれているだけなんです……」
「ふぅん」

大柄な態度でうなずくと、紗英子さんはあからさまに私を見回した。

「そんなことだろうと思ったわ。あなた、どう見たって学生って感じがしないもの。ましてやうちの生徒とは大違い」

たしかに、キャンパス内を歩いていると、流行の服や小綺麗な身だしなみをしている学生が目立つ。
着古したカットソーにジーパン、無造作にひとつに縛っただけの髪という格好の私とは雲泥の差だ。

紗英子さんは貧乏人にひけらかすように言った。

「図々しいわね。あなた、聡一朗先生がどういうお方か知らないの?」
「よくは……」

経済学で若くして教授にまでなる方なので、並みの優秀な方ではないのはよく分かっていた。

後で知ったことだけれど、メディアにも引っ張りだこで出した書籍もベストセラーになるほどで、世間からの認知も凄かった。
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