君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 聡一朗さんはあの冷淡にも見える無表情な顔で、淡々と続けた。

「結婚をしてもらって君の人生を奪ってしまった以上、俺は君をできるかぎり幸せにしたいし、不自由をかけさせたくない。それは恋愛感情でも同じだ。俺以外の男を好いても別にかまわない。ただ、あまり大学教授の妻としての体裁を気にせず大胆にされても困るがね」
「……」
「さっきは明らかに君が嫌がっているようだったから助けただけだ。だが君の年齢なら、俺なんかより同じ学生の方が気が合うんじゃないのかい」

 そう言い残すと、聡一朗さんは去って行ってしまった。

 私はただ茫然とその後姿を見送っていた。

 一度も振り返ることなく遠くなっていく背中を見つめる目からは、いつの間にか涙が零れていた。
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