君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 聡一朗さんの無表情が頭に焼き付いていた。

 私が誰と恋愛関係になろうがかまわない。

『俺が君を愛することはない』から――。

 引き裂かれるように胸が痛かった。
 でも私に聡一朗さんを責める資格はないのだ。契約。それが私達を繋ぎ止める唯一のものなのだから。

 逃げるように駆け込んだのは図書館だった。
 そうしてあの地下書庫に目指したのは、ここなら誰の目にも止まらないと思ったから。

 古い本の匂いを感じながら、私は涙を止めることはできなかった。

 胸がどうしようもなく痛かった。
 悲しくて、みじめで、やりきれなかった。

 私、聡一朗さんのことが好きなんだ。

 本当はなんとなく気付いていた。認めたくなかっただけだ。

 今はっきりとそれを痛感した今、そして同時にその想いが決して叶うことがないのだと思い知った今、私は切なさと悲しみに押し流されるしかなかった。


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