君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 微かな苛立ちが芽生え始めた俺を煽るように、学生たちの会話はさらに白熱する。

「けど、もっとやばいのがさ、この結婚がカモフラージュっていう噂だよ」
「カモフラージュ? 恋愛感情なしで結婚したってこと?」
「そうそうそう。もういい歳だしって周りから結婚結婚って催促されるのを煩わしく思って、あの教授が適当に条件がいい子を選んだったって話」
「まじで? 最悪じゃん、ありえねー」

 息を飲むしかなかった。

 どうやら、噂は相当熱い話題として広まっているらしい。

 人から人に伝えられていく過程で尾ひれが付いてとんでもないものに変貌するというのが噂の常だが、今回のように真相を衝いてしまうというパターンもあるようだ……。

 彼女とは学内での接点はほとんどない。
 苦しいが、このまま沈黙を守って、噂が飽きられてしまうのを待つしかないか……。

 さすがに焦りを覚える中、学生たちの無遠慮な会話は続く。
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