君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「もしそれ本当だとしたら、やばくないか。相手の子、かわいそうだろ」
「いんじゃね、結婚なんてそんなもんで。あの教授となら、金には苦労しなさそうだし」
「つまり金で買ったってやつ? あの冷徹教授らしいな、ははは」

 軽薄な笑いが響く中、俺は思わず鼻笑ってしまう。

 金で買った、冷徹か。

 若者らしい不躾で稚拙な言い草だ――だが、実に的確な表現だな。

 たしかに俺は、ただそばに置きたいというエゴで彼女の弱い立場を利用した。

 援助という体のいい言葉で繕って金をちらつかせて、冷徹に彼女の人生を奪った。

 まともな人間は、内に荒ぶる想いをちゃんとセーブし、それを純粋に受け入れてもらうにはどうすればいいかと試行錯誤し、慎重に相手と向き合う。

 愛した人だから、想いやって大切にする。

 俺は、彼女を愛してしまっていた。

 あの図書館での出会いから、あのたった数日のやり取りだけで、彼女に惹かれてしまった。
 こんなことは初めてだった。
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