【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
「っも、なんなんですか? みんなの前では澄ました顔だし、私にだけわざとらしく可愛い顔見せて……こうして二人きりになったらワルい顔して迫ってくるし」


 もうどうしたらいいのか分からなくてまくし立てた。

 私が累さんの“唯一”だって言われても、それが本当なのか人間の私に判断する(すべ)はない。

 こんなふうに迫られてるけれど、単純に私の血が美味しかったから自分のになってって言われてるだけにしか思えない。


「まあ、元々素はこっちだし? 澄ましてるのは外面良くしとけば人間関係が円滑に進むからだし?」


 何となく察してはいたけれど、やっぱりこのワルい顔の累さんが素なんだな。

 なんて腹黒、と少し頬を引きつらせていたら、累さんは「あと……」と呟いて目の前でしゃがんだ。

 机に両腕を置いて、その上に可愛い顔が乗る。


「こうやって可愛く振る舞うのは那智をオトしたいからかな?」

「くっ……かわっ……」

「ほら、自分じゃあ隠してるみたいだけどそうやって可愛いもの好きがにじみ出てる。せっかく那智の好みそうな見た目してんだから、オトすための武器にするの当然じゃん?」


 口は腹黒い言葉を発しているのに、その表情は天使の微笑み。

 くっ、悔しいけどその通りです!

 きゅうぅんと胸が締め付けられて、そのままドキドキと鼓動が早まる。
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