先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
 わたしのイメチェンを快く思っていないらしく、すれ違う際に睨まれ、遠目から指を差されたりしていた。

 イメージチェンジの目的は涼介じゃないので理由を話せば理解して貰えるかもしれないと甘い事を考えたが、本宮君も本宮君で人気者だから応援なんてしてくれないか。それに『本宮君と釣り合わない』はもっともな意見だ。
 なにより、本宮君がわたしに迷惑しているとは……目の前が真っ暗になっていく。

「なんであんな似合わない化粧を始めたんだろうね?」

「ワンチャン、彼女になれるって勘違いしたとか? 向日葵先輩の目、恋する乙女って感じでキラキラしてるもん」

「確かに。本宮君が大好きって顔してるわ」

 口コミで満点の星がつけられたマスカラなのに、わたしの涙は黒く染まった。

 そっか、本宮君に可愛いかわいいと言われたい根本がわたしからごっそり抜けていたんだね。可愛い、かわいいですねの声掛けを挨拶に位置付けながら、その意味を深く考えようとしなかった。

 ーーわたしは本宮君が好き。だから、可愛いって言われたい。

 あぁして周りにはバレバレなのだから本宮君は迂闊に可愛いかわいいと言えない、言ったらいけないはずだ。

 彼女達が出ていくのを待ち、洗面台の蛇口をひねる。涙も恥ずかしさもメイクも荒々しく落とした。
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