先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
「本当、暑いね、蝉の声が凄い」

 いつも他愛のない話をしながら世話をするので、話題を必死で捻出する。失恋で弱まる心が絞られる事でギシギシ軋み、涙が出そう。

 運動場のサッカー部も練習に熱が入って、夏は本番を迎えようとしていた。
 じりじり身を焦がす陽射しとヒマワリを見上げる。

「先輩? 何があったんですか? 様子がおかしいですって。体調が悪いとか?」

「大丈夫だよ、元気、元気!」

 本宮君って大人だな。わたしの心を察知し、可愛い、かわいいと言わない態度で伝えようとしていた。
 それなのに当のわたしは人に指摘されなければ気持ちに気付かなかったんだ。

 勝手に一人で盛り上がり、メイクやファッションを頑張る姿は本宮君にどう映っていたのだろう。

「向日葵先輩」

 納得いかない声音が近付いて来ようとする。

「こっちに来ないで!」

 青空に劣等感を溶かしてしまいたかったけれど、わたしは拒絶を吐いていた。優しくしないで、構わないで、もう放っておいて、連鎖する言葉を無理やり飲み込む。

「先輩?」

「あはは、ごめん、大声出しちゃって。実は風邪気味で本宮君に移したら悪いでしょ? だからこっちに来ない方がいいよ」
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