先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
 本宮君の可愛いという響きの次にパシンッーー乾いた音が続く。
 瞬間、涼介から解放される感覚がし、目を開けてみると本宮君が隣に立っていた。

「本宮、前も聞いたけどさ、向日葵がカワイイって大丈夫?」

 涼介は叩かれたであろう手を撫でつつ、小馬鹿にする。

「僕も前に答えましたけど、先輩が可愛くないなんて目が腐ってませんか? まぁ、アンタに可愛く映らないなら僕はその方がいいんですけどね」

 物怖じする所か、本宮君も煽り返し、先輩後輩の立場を気に掛ける様子はない。

 この学校の人気者二人が険悪なムードで対峙する光景は好奇心を騒がせるだろう。涼介のファン等は待機しきれず、こちらへ集まろうと動き出す。

「あー、そういえば本宮は可愛いって言うのが口癖なんだっけ? 本宮みたいなイケメンが可愛いカワイイって言うから、向日葵が勘違いするんだぜ?」

 涼介はムキになり、女の子達の行動を把握していない。

「口癖じゃないし勘違いでもありません。『可愛い、かわいいですね』って意味もなく言うほど暇じゃないんです」

 一方、位置的に女の子が来るのが見えている本宮君だが調子は変わらない。
 というより、キョロキョロして狼狽えるわたしの手を取ると繋いできた。

「え?」

 意図が読めず、本宮君を見上げる。

「先輩、僕は『可愛い、かわいいですね』他の奴に取られる為に言ってたんじゃない」
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