先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
 瞬間、心にグサリと突き刺さる音がする。
 わたしだって日焼け止めを塗ったり、トレンドを押さえきれていないものの身なりには一応気を付けているつもり。

 そもそも涼介は昔からの付き合い、本宮君は部活の先輩後輩とし接するだけでわたしへ特別な感情なんて抱いていない。

 そんな事、百も承知だし自惚れてもいないのに……。

 表立って容姿をからかわれれば傷付く。

 わたしは唇を噛み、涼介を見た。涼介のせいでこんな酷い言葉を投げ付けられるんだって非難を目一杯込めたら涙が出てきそう。

「い、いや、俺はーー」

「今、誰が言いました?」

 涼介の弁解より早く、本宮君が振り向いた。ついさっき浮かべていた笑顔は消え、声音も低くなり不快感をあらわにする。

「先輩が可愛くない? はぁ? 目、腐ってるんですか? どう見ても向日葵先輩の方がアンタ等よりかわいいですよ」

 そんな本宮君の主張は場の空気を凍りつかせた。彼だけが至極当然な発言をしたと構え、他は固まって反応出来ない。
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