先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
「いやいや本宮こそ大丈夫? 向日葵がカワイイ?」

 金縛りから解け、涼介がまずしたのはファンの子を庇うこと。涼介は本宮君の美的感覚を疑う。

 こちらも幼馴染みに今更可愛く思って貰わなくとも結構だ。それより周囲が同意する方がいたたまれない。
 売り言葉に買い言葉、本宮君が反論を仕掛けるのを察知し、わたしは遮った。

「あのね、本宮君は可愛いが口癖なの。本気に受け取らないでよ」

 告げた途端、みんなで笑い声を上げる。とにかくこの場を収めたいわたしも笑顔を作り、本宮君へも促す。

「ーー先輩は口癖だと思ってたんですか?」

 ところが彼は笑うどころか、ますます怒っていた。

「え? だって本宮君、植物に大きくなれよとかキレイな花を咲かせろよとか言うよね? わたしにも同じだと」

 本宮君が口元を覆う。しまった、クールキャラなのに草木へ話し掛けていると知られたくなかったか。

 いや、でも取っ付きにくいイメージを和らげるチャンスだ。わたしが言うのも悪いが、本宮君は自己プロデュース力が無いのに等しい。
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