恋の毒
「俺、鳴海さんと」
「嫌」


 その先を聞いてしまっては本当に取り返しがつかなくなりそうで、私は高城君の言葉を遮った。


 どうやら私には、思うようにいかないことがあれば、相手を傷付けてしまうほど強く否定してしまう癖があるらしい。


 高城君が困っているのが見える。


 ここは向き合って話すべきだろう。

 逃げて、海に頼るべきではない。


「……高城君といると、私は私のことが嫌いになる。私でいられなくなる。それが……怖いの」


 高城君は目を泳がせ、海のほうを向いた。


 私の意味不明な言葉をゆっくりと噛み砕いてくれているような気がする。


 そして次の言葉が怖くて、私は視線を落とす。


「……それは、俺と話すのも嫌ってこと……?」


 小さく首を縦に振る。


「……わかった」


 波音に消されてしまいそうなほど小さな声で、この状況を作り上げたのは私のくせに、私は誤解を解かなければと思った。


 顔を上げると、少し悲しそうな高城君の横顔があった。


「嬉しかった!」
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