交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~


彼女にプロポーズをしてから3日が経った。
約束の3日だ。俺は柄にもなくどこか落ち着かない日々を過ごしていた。

彼女はOKしてくれるだろうか。断られたらどうする。しつこい男は嫌われるというし、執拗に迫ったりすればストーカーになりかねない。

今の時点ですでに相当おかしなことを言っているのは百も承知だ。
その上で彼女が下す決断が、お互いにとって良い方向であることを願った。

前に定食屋を訪れた時はちょうど閉店したところだったので、今日こそはと少し早めに定食屋へ向かった。
午後8時でも客はまばらにいて、暖簾をくぐると母と同じ年くらいに見える女性がにこやかに席を案内してくれた。

席につき、メニューを開いてはみるが、さりげなく店内を見渡す。
彼女がいないのだ。毎日いるわけではないのか、今日たまたまいないだけなのか。

まさかの事態に、俺は内心焦りを覚えつつ、あの雨の日に弁当に入っていた唐揚げの定食を注文した。

2回ともここで会っているし、ここに来れば絶対に会えると思っていたばかりに、会えなかった時のことは考えていなかった。単に余裕がなかったのもあるが、連絡先を聞いておかなかったのは重大なミスだ。

定食が運ばれてくると、美味しそうな香りが鼻をくすぐる。
彼女が言った通りの暖かい食事だ。美味しくてあっという間に食べ終えてしまう。弁当も美味しかったけれど、やはりこの店の売りは暖かい食事なんだろう。それはきっと、気さくな店主夫妻が作り出す店全体の雰囲気も踏まえて。

すっかり和みつつ、仕事の参考になるかもしれないと考え込みそうになるのを堪え、今日はもう諦めて帰ろうかと思った時だ。

「ただいま〜! 久しぶりに残業しちゃったよ〜」

ガラガラと扉の開く音と、間延びした呑気な声が耳に届いた。

「ちょっと小梅! お客さんがいるのよ!」

「えぇ!? ご、ごめんなさい、いらっしゃいま、せ…って、深山さん!」

母親に小声で注意された彼女が俺を捉えると、心底驚いた顔をして数秒固まる。

「あら、小梅の知り合いなの?」

「えっと、」

彼女に会えたことを心が喜ぶのを押さえ込み、口ごもる彼女に変わって口を挟もうとした時だ。

「……か、彼氏!なの!」

声高らかに言った彼女に、俺は何も飲んでいないのにむせそうになった。

…今、彼氏だと言ったのか。
俺はいつから彼女の恋人になったんだ……いや、急にプロポーズしたのは俺の方だが。

これは、つまりそういうことだよな?
この契約を、成立させる。
俺は立ち上がり、腰を折った。

「初めまして。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。小梅さんとお付き合いさせていただいています、深山一織と申します」

まさかこんな形で返事を聞くことになるなんてな。
突拍子もないのはどうやら俺だけではなく、彼女の方もまた大胆な性格らしい。




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