交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
二、夫婦を目指して




湿気を含んだ夜風が頬を撫で、深山さんの大人で落ち着いた香りが鼻をかすめる。

「…先程はすみません。つい、勢いであんなことを…」

「驚いたけど、古嵐さんの機転で契約結婚を円滑に進めることができそうです」

「驚いてたんだ…」

深山さんは真面目な口調で、部下を褒めるみたいに言った。

私の口から出た突飛な展開に、彼は瞬時に乗っかってきてくれた。
隙を見せない適応力の高さに感服したけれど、内心ではドキドキしていたのかと思うと、見た目はクールな深山さんの人間らしさにくすりと笑いがこぼれる。

「古嵐さん」

「は、はい!」

呑気なことを考えていると、深山さんが立ち止まり、こちらを向き直って私を見下ろす。

「一応、確認なんですが…俺との結婚、承諾してくれたと思ってもいいですか」

どこか自信なさげな彼に、私は大きく頷く。

「はい。 深山さんとの結婚は、私にとってメリットしかないという結論になりました。考える時間をくださってありがとうございました」

「…結婚しても、いずれ契約満了の時が来れば離婚することになると思います。離婚歴がつくことになりますが、それでもいいんですか?」

真っ直ぐに見つめてくる瞳が心配するように揺らぐ。

「離婚…そっか、たしかにそうですね。 …うーん、それなら離婚しなきゃいいんじゃないですか?」

深山さんがわずかに目を丸くする。

「始まりは契約でも、本物の夫婦になれるように努力するのもありじゃないですか。せっかく夫婦になるんですし、私は、深山さんと仲良くなりたい……って、す、すみません!私は良くても、深山さんが困りますよね! 今のなしで…」

彼が私を選んだのは、利害が一致したから。それ以上でも以下でもないのに、本当の夫婦になりたい、だなんて惚けたことを。舞い上がってしまったのが恥ずかしくて顔をあげられない。
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