交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
暖簾を取り込むだけなのに濡れてしまった服をはらいながら急いで中に戻ろうとした時だ。
パシャパシャと水を蹴るような足音が聞こえ、なんとなく振り向いた。
この雨の中を傘もささずに小走りで近づいてきた男性が、すっかり元の色とは違ってしまっただろうスーツをはらい眉を下げて言うのだ。
「少しだけ屋根を貸していただけないだろうか」
低く響いた言葉に、私はたまらず声を上げる。
「びしょ濡れじゃないですか!寒いでしょう、そのままだと風邪をひいてしまいますよ。タオルがあるので、中に入ってください!」
髪はぼさぼさ、滴る雨水が酷く冷たく見えて放っておけなくて、勢いのまま彼を店内に引きずり込んだ。
「すみません、助かります」
彼は店の前の小さな屋根の下を借りるつもりだったのだろう。
遠慮するので強引にタオルを押し付けると、彼は小さく頭を下げて受け取り、服にタオルを押し当てていく。その様子をなんとはなしに見ていて気づく。
背は高く、質の良さそうなスーツを完璧に着こなすスタイルの良さ、そして整った顔立ちをしている。
雨に濡れているのにも関わらずそう見えるのだから、リアルに水も滴るいい男といった感じだ。
外観や内装は部分的に修繕を重ねた古い造りな定食屋には似ても似つかないな、と思いつつ、両親は厨房の奥の我が家に戻っていていないので、ふたりきりの静かな時間を遮るように聞いた。
「傘を持っていなかったんですか?」
「…いえ、朝持って出たんだが、後輩に貸し出してしまって。俺は外に出る予定はなかったから」
それが、急に予定変更になったのだと彼は表情を変えることなく淡々と言う。
「お優しいんですね。お勤めご苦労様です。でも、今日は台風ですよ。今は風は強くないですし、忘れ物の傘があるので持っていってください」
「また走るので大丈夫です。タオル、助かりました」
「え!?ダメですよ、人間体が資本なんですから、ちゃんと傘をさして安全に帰ってください!」
まだ雨は止まない。それどころか酷くなる予報なのだ。お節介魂に火がついてしまったので、せっかく水分をふき取ったのにまた濡れに外に出るなんてしてほしくない。
パシャパシャと水を蹴るような足音が聞こえ、なんとなく振り向いた。
この雨の中を傘もささずに小走りで近づいてきた男性が、すっかり元の色とは違ってしまっただろうスーツをはらい眉を下げて言うのだ。
「少しだけ屋根を貸していただけないだろうか」
低く響いた言葉に、私はたまらず声を上げる。
「びしょ濡れじゃないですか!寒いでしょう、そのままだと風邪をひいてしまいますよ。タオルがあるので、中に入ってください!」
髪はぼさぼさ、滴る雨水が酷く冷たく見えて放っておけなくて、勢いのまま彼を店内に引きずり込んだ。
「すみません、助かります」
彼は店の前の小さな屋根の下を借りるつもりだったのだろう。
遠慮するので強引にタオルを押し付けると、彼は小さく頭を下げて受け取り、服にタオルを押し当てていく。その様子をなんとはなしに見ていて気づく。
背は高く、質の良さそうなスーツを完璧に着こなすスタイルの良さ、そして整った顔立ちをしている。
雨に濡れているのにも関わらずそう見えるのだから、リアルに水も滴るいい男といった感じだ。
外観や内装は部分的に修繕を重ねた古い造りな定食屋には似ても似つかないな、と思いつつ、両親は厨房の奥の我が家に戻っていていないので、ふたりきりの静かな時間を遮るように聞いた。
「傘を持っていなかったんですか?」
「…いえ、朝持って出たんだが、後輩に貸し出してしまって。俺は外に出る予定はなかったから」
それが、急に予定変更になったのだと彼は表情を変えることなく淡々と言う。
「お優しいんですね。お勤めご苦労様です。でも、今日は台風ですよ。今は風は強くないですし、忘れ物の傘があるので持っていってください」
「また走るので大丈夫です。タオル、助かりました」
「え!?ダメですよ、人間体が資本なんですから、ちゃんと傘をさして安全に帰ってください!」
まだ雨は止まない。それどころか酷くなる予報なのだ。お節介魂に火がついてしまったので、せっかく水分をふき取ったのにまた濡れに外に出るなんてしてほしくない。