交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
努力するとは言ったけど side 一織
昨日は一日雨だったけど、今日は朝からじりじりと照りつける太陽と青い空がすっかり主役になっている。
寝ぼけ眼のままベッドから出てカーテンを開けると、すっと陽光が差し込んで眩しい。
ふと、背後で衣擦れの音がする。
振り返ると、眩しかったのか寝返りを打った彼女が嫌そうに顔を顰めている。
そのあどけない寝顔を見て、俺は密かに笑を零した。
どうやら小梅は朝が苦手らしい。一緒に暮らしはじめて1週間。俺が出勤する頃に起き出す彼女はいつも、眠たそうにしながら俺を見送ってくれる。
休日ぐらいゆっくり寝かせてやりたい気もするが、今日は前々から約束していたデート、の日だ。
今起こさずに昼過ぎに目を覚まして、今日の計画を無しにしたなどと自分を責めては困るから、声をかけてなくては。
「…小梅」
「んー…」
「そろそろ起きよう」
「まだもうちょっと……ん、一織、さん…?」
「おはよう、小梅」
上体を起こして、まだ覚醒しきっていない頭を必死に働かせているのだろう。
「おかえりなさい…もう朝だけど」
へらりと笑ってみせる小梅に、こちらまで気が抜ける。
「ただいま。昨日は会えなかったもんな」
昨日は土曜日だというのに、朝彼女が起きる前に家を出て、帰ってきたのは日付が変わってから。
それもこれも、今日を完全な休日にするため。せっかくの小梅とのデートの途中で仕事の電話がかかってきたり呼び出しなど起きないよう、全力で仕事を片付けてきたのだ。
「あれ、私、昨日ベッドで寝た記憶が…」
「帰ってくるの、待っててくれたんだろ?ソファで寝落ちしてたから、運んだ」
先に寝てていいと連絡はしたけれど、大抵小梅は起きて待っていてくれる。昨日はいつもよりも遅くなったせいか、帰ったらソファですやすやと寝息を立てていた。