交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「ありがとうございます! あ、今日もお弁当なら作れますよ!お作りしましょうか!」
「有難いですが、今日は遠慮します。絶対、次は定食を食べに来ますから。……それで実は、今日はあなたに話があって来ました」
「私に、ですか? なんでしょうか」
彼は前に会った時と同じように、特に表情を変えることはなく至極冷静だ。
会うのは今日が2回目。私に話とはなんだろうと小首を傾げる。
するとおもむろに持っていたカバンから名刺を取りだし、丁寧な所作で渡す。
「俺は深山一織。ここからも見えるだろうけど、あそこのビルで社長をしています」
「しゃ、社長さん、だったんですね…。 こ、古嵐小梅と言います」
反射で受け取り流れで名乗り返すけれど、情報過多で頭がどうにかなりそうだ。
だって、ここからも見えるほど大きな建物で、彼が指さす先にあるビルは、名刺に書かれた通り大手の食品系の企業なのだ。
『深山グループ』、誰もが1度は聞いたことがある社名だ。
テレビCMもよく流れている。
最初に会った時も今日も、ナチュラルに垣間見える育ちの良さに納得すると同時に、そんな方が定食屋の小娘になんの用かとますます分からなくなった。
名刺から顔を上げ、深山さんを見ると、切れ長の瞳がまっすぐに私を捉えていた。
そして形のいい薄めの唇が開く。
「――古嵐さん。急な話ですが、俺と結婚してくれませんか」
「けっ、え、?」
急とは言うけれど、急にも程があるのでは……。
頭にはてなマークを浮かべまくって、私は呆然と彼を見つめた。
「俺は、古嵐さんと家族になりたいと思っています」
家族…?って、ほんとにそう思ってます?顔が怖いんですが……
なんだか表情の無さに拍車がかかって、とても難しい顔をしている。
わけのわからない展開ながらも、彼の眉間にしわが寄っているのははっきりとわかる。
「…深山、さん。あの、顔が怖いです!」
思わずそう呟いてしまう。他にもっと、聞きたいことも言いたいこともあるのに!
深山さんはハッとして、小さく咳払いを挟む。
「すみません。緊張すると、癖でつい。元々無愛想なのに余計に怖いとよく言われるんですが」
少しバツが悪そうに話す深山さん。端正な顔立ちをしているのに加えて性格や雰囲気がクールだから、確かに怖い。
でも、笑った顔こそほんの少ししか見せてくれなかったけれど、彼の気遣いに触れているから。悪い人じゃないのは分かる。
それはそうと、話を元に戻さなくては。
私の聞き間違いではなく、彼が本気で言っているなら、私は今この人にプロポーズをされた気がする。
少し落ち着いていた情報が、また頭を回りだした。
「有難いですが、今日は遠慮します。絶対、次は定食を食べに来ますから。……それで実は、今日はあなたに話があって来ました」
「私に、ですか? なんでしょうか」
彼は前に会った時と同じように、特に表情を変えることはなく至極冷静だ。
会うのは今日が2回目。私に話とはなんだろうと小首を傾げる。
するとおもむろに持っていたカバンから名刺を取りだし、丁寧な所作で渡す。
「俺は深山一織。ここからも見えるだろうけど、あそこのビルで社長をしています」
「しゃ、社長さん、だったんですね…。 こ、古嵐小梅と言います」
反射で受け取り流れで名乗り返すけれど、情報過多で頭がどうにかなりそうだ。
だって、ここからも見えるほど大きな建物で、彼が指さす先にあるビルは、名刺に書かれた通り大手の食品系の企業なのだ。
『深山グループ』、誰もが1度は聞いたことがある社名だ。
テレビCMもよく流れている。
最初に会った時も今日も、ナチュラルに垣間見える育ちの良さに納得すると同時に、そんな方が定食屋の小娘になんの用かとますます分からなくなった。
名刺から顔を上げ、深山さんを見ると、切れ長の瞳がまっすぐに私を捉えていた。
そして形のいい薄めの唇が開く。
「――古嵐さん。急な話ですが、俺と結婚してくれませんか」
「けっ、え、?」
急とは言うけれど、急にも程があるのでは……。
頭にはてなマークを浮かべまくって、私は呆然と彼を見つめた。
「俺は、古嵐さんと家族になりたいと思っています」
家族…?って、ほんとにそう思ってます?顔が怖いんですが……
なんだか表情の無さに拍車がかかって、とても難しい顔をしている。
わけのわからない展開ながらも、彼の眉間にしわが寄っているのははっきりとわかる。
「…深山、さん。あの、顔が怖いです!」
思わずそう呟いてしまう。他にもっと、聞きたいことも言いたいこともあるのに!
深山さんはハッとして、小さく咳払いを挟む。
「すみません。緊張すると、癖でつい。元々無愛想なのに余計に怖いとよく言われるんですが」
少しバツが悪そうに話す深山さん。端正な顔立ちをしているのに加えて性格や雰囲気がクールだから、確かに怖い。
でも、笑った顔こそほんの少ししか見せてくれなかったけれど、彼の気遣いに触れているから。悪い人じゃないのは分かる。
それはそうと、話を元に戻さなくては。
私の聞き間違いではなく、彼が本気で言っているなら、私は今この人にプロポーズをされた気がする。
少し落ち着いていた情報が、また頭を回りだした。