交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「そうだ、今度、山本さん幹事の同窓会があるみたいだけど、古嵐さんも参加する予定?」
「うん。出席のお返事をしたよ」
「そっ、か。 あのさ、古嵐さん、僕…」
戸川くんは一度目を伏せて、真剣な顔で私を見る。
「ごめん! 私、帰って夕飯作らなきゃ。…夫がもうすぐ帰ってくるの」
戸川くんの言葉を遮って、私は慌てて言った。
そっと、胸元のリングに触れる。
「夫…って、古嵐さん、結婚、してたんだね」
「そうなの。 …私、もう行くね。元気そうでよかった」
上手く笑えただろうか。私は踵を返して歩き出した。
彼はクラスメイトの中でも優しくて、唯一まともに話す男の子だった。
…戸川くんに告白されるまでは。
ずっと好きだったと言ってくれたけれど、私は友達だと思っていたのでお断りした。
その後は、お互い今まで通りには話せなくて、そのまま卒業してしまった。
私に振られた後、戸川くんは何日か学校を休んだ。本当に風邪を引いたのかもと思いたかったけれど、クラスメイトで戸川くんの友達のひとりから『古嵐に振られて落ち込んでる。俺らから見ても、ふたりいい感じに見えたんだけどなー』と聞いて……。
あぁ。なんだか当時のことをいろいろ思い出してきた。
あれからもうずいぶんと経ったのに、戸川くんの顔を見たら、どんな顔をして会えばいいのか分からなくて逃げるように帰ってきてしまった。
挙句の果てに、わざわざ結婚したアピールまでして…。
ネックレスを外して、きらりと光るそれを左手の薬指に付け替える。お鍋の準備をしていたら一織さんが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい。お仕事おつかれさまです」
「ありがとう。小梅も、おつかれ。 今夜は鍋か」
一織さんが私の手元を見てわずかに微笑む。
「はい。最近朝晩は冷え込むので、お鍋解禁です。あ、一織さん、お餅を入れても大丈夫ですか?」
「大丈夫だが…小梅、何かあったか?」
心配げに、いつもより静かに一織さんが言う。
「…な、なんでですか?」
「元気がないように見える」
いつも通りのつもりだったけれど、一織さんは鋭い。
一織さんを心配させてしまった。もうさっきのことは忘れよう。
今夜は、一織さんと美味しいお鍋を囲むんだから。
「大丈夫です! 心配かけてごめんなさい」
「…何かあったらなんでも言うんだぞ。俺は小梅の夫なんだからな」
「ふふっ、頼もしいです。じゃあ一織さんも、妻の私に頼ってくださいね?」
力こぶを作って見せると、一織さんがふっと笑う。
「あぁ、そうするよ」
私を大切に思ってくれる彼のことを、私も大切にしたい。
支え合って、おじいちゃんとおばあちゃんになってもふたりで生きていけたらいいな。
「うん。出席のお返事をしたよ」
「そっ、か。 あのさ、古嵐さん、僕…」
戸川くんは一度目を伏せて、真剣な顔で私を見る。
「ごめん! 私、帰って夕飯作らなきゃ。…夫がもうすぐ帰ってくるの」
戸川くんの言葉を遮って、私は慌てて言った。
そっと、胸元のリングに触れる。
「夫…って、古嵐さん、結婚、してたんだね」
「そうなの。 …私、もう行くね。元気そうでよかった」
上手く笑えただろうか。私は踵を返して歩き出した。
彼はクラスメイトの中でも優しくて、唯一まともに話す男の子だった。
…戸川くんに告白されるまでは。
ずっと好きだったと言ってくれたけれど、私は友達だと思っていたのでお断りした。
その後は、お互い今まで通りには話せなくて、そのまま卒業してしまった。
私に振られた後、戸川くんは何日か学校を休んだ。本当に風邪を引いたのかもと思いたかったけれど、クラスメイトで戸川くんの友達のひとりから『古嵐に振られて落ち込んでる。俺らから見ても、ふたりいい感じに見えたんだけどなー』と聞いて……。
あぁ。なんだか当時のことをいろいろ思い出してきた。
あれからもうずいぶんと経ったのに、戸川くんの顔を見たら、どんな顔をして会えばいいのか分からなくて逃げるように帰ってきてしまった。
挙句の果てに、わざわざ結婚したアピールまでして…。
ネックレスを外して、きらりと光るそれを左手の薬指に付け替える。お鍋の準備をしていたら一織さんが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい。お仕事おつかれさまです」
「ありがとう。小梅も、おつかれ。 今夜は鍋か」
一織さんが私の手元を見てわずかに微笑む。
「はい。最近朝晩は冷え込むので、お鍋解禁です。あ、一織さん、お餅を入れても大丈夫ですか?」
「大丈夫だが…小梅、何かあったか?」
心配げに、いつもより静かに一織さんが言う。
「…な、なんでですか?」
「元気がないように見える」
いつも通りのつもりだったけれど、一織さんは鋭い。
一織さんを心配させてしまった。もうさっきのことは忘れよう。
今夜は、一織さんと美味しいお鍋を囲むんだから。
「大丈夫です! 心配かけてごめんなさい」
「…何かあったらなんでも言うんだぞ。俺は小梅の夫なんだからな」
「ふふっ、頼もしいです。じゃあ一織さんも、妻の私に頼ってくださいね?」
力こぶを作って見せると、一織さんがふっと笑う。
「あぁ、そうするよ」
私を大切に思ってくれる彼のことを、私も大切にしたい。
支え合って、おじいちゃんとおばあちゃんになってもふたりで生きていけたらいいな。