交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
三、ドキドキの正体



実家である古嵐定食から徒歩圏内、引越し先のマンションからは電車で一駅ほどのクリニック。
私はここで医療事務として働いている。

結婚してから出勤するのは初めてで、自分の名前が『古嵐』から『深水』に変わっているのが慣れない。

「あ〜、新婚さんおはよう! どう?旦那様との新生活は」

更衣室で着替えていたら、語尾にハートでも着いているかのようにニマニマと声をかけてきたのは、このクリニックの看護師さんだ。
細身で小柄な彼女は、見た目に反して逞しく溌剌としていて仕事もスマートなので、患者さんはもちろん職員からの信頼も厚い。

私の5つ年上で一児のママでもある筧(かけい)さんとは、プライベートでもたまに息子さんと3人でランチに出かけたりと仲良くさせてもらっている。
< 57 / 167 >

この作品をシェア

pagetop