交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~

エントランスに降りると、受付嬢が申し訳なさそうにしながら一先ず応接間に通したと説明する。
彼女達に非はないとフォローを入れ、丸山の元へと向かった。

半個室になっている簡易的な応接間の中央、ソファに堂々と鎮座する姿を目に入れ、細く息を吐く。
丸山は俺を見るなり目を輝かせた。

「深山社長! 来てくださったんですね!」

お前が来いと騒ぐからだろう、と悪態をつきたくなるのをぐっと堪え、立ったまま話をする。

「丸山副社長。あまり従業員を困らせないでいただきたい」

「社長が素直に応じてくださらないからでしょう?」

ふふっと笑みを浮かべる丸山の余裕綽々な態度。相手をする方が疲れそうだ。

「…ご用件は」

「深山社長にお話があります。私たちの今後に関わる大切なことですわ」

俺は眉間に皺を寄せ、丸山を見据える。

「…奇遇ですね。実は私も丸山商事とのことについて話があるんですよ」

何を勘違いしたのか、丸山は勝ち誇ったように顔を綻ばせた。

「それでは、こんな所では落ち着いて話も出来なそうですし、近くのホテルに場所を変えましょう」

こんな所、ね。俺の会社だと分かって言っているのか。それに、ホテルだと?そんな怪しげな話に誰が乗るか。
オブラートに包んでそう言うつもりだった。

「まさか断ったりしないですよね? …古嵐定食、でしたっけ。奥様のご実家に行ってきたんですよ、今日ね。 趣があるというかなんというか、パッとしないボロ屋? やっぱりあなたには釣り合わないと思うんです、今の奥様は」

彼女は上品そうな笑みを浮かべるが、目は笑っていないし下品にしか聞こえない。

「妻には近づくなと言ったはずですが」

「あら。私はただランチに伺っただけですのに」

この女がどういう意図で古嵐家に行ったのか、今その話を持ち出したのかは聞くまでもない。わざわざ俺に言うということは下手な真似はしていないのだろう。
念の為、丸山との話し合いが終わったら小梅に確認しようと決め、また会社で暴れられても面倒なため彼女について行くことにした。
< 94 / 119 >

この作品をシェア

pagetop