交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
エントランスに降りると、受付嬢が申し訳なさそうにしながら一先ず応接間に通したと説明する。
彼女達に非はないとフォローを入れ、丸山の元へと向かった。
半個室になっている簡易的な応接間の中央、ソファに堂々と鎮座する姿を目に入れ、細く息を吐く。
「深山社長! 来てくださったんですね!」
お前が来いと騒ぐからだろう、と悪態をつきたくなるのをぐっと堪え、立ったまま話をする。
「丸山副社長。お話があります。 我社と丸山商事との今後に関わる話です」
「あら、それなら丁度良かったわ。私も話がありますの。 …こんな所では落ち着いて話も出来なそうですし、近くのホテルに場所を変えましょう」
こんな所、ね。それに、ホテルで話だと?そんな怪しげな話に誰が乗るか。
オブラートに包んでそう言うつもりだった。
「まさか断ったりしないですよね? …古嵐定食、でしたっけ。奥様のご実家に行ってきたんですよ、今日ね。 趣があるというかなんというか、パッとしないボロ屋? やっぱりあなたみたいな人には釣り合わないと思うんです、今の奥様は」
彼女はふふ、と笑みを浮かべるが、目は笑っていないし下品にしか聞こえない。
この女がどういう意図で古嵐家に行ったのか、今その話を持ち出したのかは聞くまでもない。わざわざ俺に言うということは下手な真似はしていないのだろう。念の為、丸山との話し合いが終わったら小梅に確認しようと決め、また会社で暴れられても困るため彼女について行くことにした。