冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました

第30話 似た者同士

「え…どうして!?佐藤さんが辞めるなんて…」

茉白はデザイナーの佐藤から退職の意向を伝えられた。

「前にも少しだけ言いましたけど…私、影沼部長と合わないみたいで…」
佐藤は俯きがちに言った。

「でも…影沼さんは営業部で、佐藤さんはデザイン部じゃない…」

「これからは営業部主体で商品の企画とデザインを決めるそうです。デザイナーが悩む時間がもったいないから、言われたものだけ作れって。」

(………)
茉白はAmselで墨田に同じようなことを言われたのを思い出した。

「でも私が内勤で企画に携わることが増えるはずだから—」

「私も、茉白さんと企画の話をするのは大好きだったんですけど…すみません。もう社長にも伝えました。」

(大好き“だった”…)

過去形の言葉に佐藤の意志の固さを感じて、茉白はそれ以上引き留められなかった。


「営業行ってきます。営業車使います。」

この日、茉白は営業先をいくつか回り、最後にシャルドンに行くことになっていた。
茉白が担当営業として一人でシャルドンに行くのは今日が最後だ。


シャルドン本社・商談ルーム
いつものように遙斗と米良が茉白の話を聞き、意見を述べる。

「—では、今日の話を持ち帰ってデザイナーに共有しますね。これでまずはサンプルから生産に入ります。」
“デザイナー”という言葉で、佐藤を思い出す。
このレイングッズが一緒に手掛ける最後の商品かもしれない。

「あの…ご報告があって…」
打ち合わせの終わりに茉白が切り出した。

「私、御社の担当を外れることになりました。」

「………」

「え!?」
遙斗は表情を変えず、米良は驚いた顔をする。
< 105 / 136 >

この作品をシェア

pagetop