天使の受難 アレクサンドラとグルシア(魔法の恋の行方・シリーズ10)

長老の依頼

「今回の魔女討伐については、
君の功績は、十分評価に値する」

最高位の天使セラフィムは、長老の姿を好む。
彼は真っ白な髭に手をやり、
深くうなずいた。

「おほめいただきありがとうございます」
グルシアは頭を下げた。

「その事後処理の件で、
大魔女アレクサンドラについては、君に対応してもらいたい」

天界の事後処理

天使が魔女を捕まえると、
ニンゲン界に移送される。

そして、GPS、つまり天使識別の徴(しるし)をつけられる。

徴(しるし)があれば、天界で魔女たちの動きをコントロール・管理できるからだ。
ニンゲン界で生活をすると、徐々に無害化していく。

魔女の持つ邪悪な特性が、薄れてくるのだ。

もちろん、例外もある。
生活環境が悪いと、邪悪性はなかなか抜くことができない。

「今回は、大魔女ですから、
海の中か岩とかに、封印したほうが早いと思いますが・・」

封印とは、永遠の眠りを意味する。

グルシアは、自分の上司である長老に、異議を申し立てた。

天界のこの分野(いわゆる魔女狩り)では、一番仕事ができるのは、グルシアであったし、
他の天使もそれは認めるところだ。

「そうしたいのは山々だが、
我々の掃除が行き過ぎると、人間界に影響がでてしまう」

長老は手で、自分の濃い紫のトーガの埃を払うしぐさをした。

「ニンゲンは、清い泉には住めない存在なのだ。
憧れは強くあるがね。
そこそこ、魔界的な欲望があってこそ、ニンゲン界は発展するし、それがきっかけで飛躍的に伸びる者もいる。
下級天使を飛び越えてしまうほどの、神聖に激変する者もいる」

グルシアは、ため息をついた。
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