図書館の彼
あの会話を聞いて以降、馨さんは図書館には来ているようだったけど、私に話しかけることも目を合わせることすらなくなった。
私から話しかけても軽く流されて、全く会話ができない。
なんでだろう。私何かしたかな。
「待ってください。私が何かしたなら謝ります。」
また今日も目を合わせずに帰ろうとする馨さんの腕を掴んで引き留める。
細い腕……。
「咲依さんは何もしてないですよ。」
「だったらなんで……。」
「それは言えませんが、とにかく咲依さんは悪くないです。」
「じゃあ“実験”が何か関係してるんですか?」
「!?どこでそれを……!」
「たまたま話しているのを聞きました。」
「……あの時か。」
「すみません、勝手に聞いてしまって。」
「いえ、こちらの不注意なので。
それよりその事は忘れてください。」
「なぜですか?」
「知らない方がいいこともあります。」
「でも知りたいです。」
「ダメです。知れば咲依さんの身に危険が及ぶかもしれない。」
「危険って?」
「それは……」
「たくさん注射されるとか?」
「…やっぱりあの時見たんですね。」
「はい。」
「他に知っていることは?」
「他?特にないですけど。」
「僕のことはもう全て忘れてください。その方が身のためです。」
「嫌です。一緒にいて楽しいと思える人は初めてだったんです。」
「大丈夫。きっとこの先見つかりますよ。」
「見つからなかったらどうしてくれるんですか?」
「見つかると思います。」
馨さんは頑なに引いてくれなくて、早々に話を切り上げると、帰っていってしまった。