ワケありベビーと純真ママを一途な御曹司は溢れる深愛で離さない~君のすべてを愛してる~
こどもたちの描いた絵と絵本のおみやげをもらって参観会は終わり解散となる。
昴は歩那を離してしまったら夢が覚めてしまうとでも言うように、ずっと抱きしめていた。

参観会は午前中で終わったので、帰宅すると丁度昼時になった。
昴が食事を手配してくれていて、帰宅と同時にあたたかい総菜が届けられた。

種類がたくさんあって、広げるとテーブルがいっぱいになる。有名ホテルが最近始めたデリバリーサービスらしくパーティーの食事ように豪勢で、見たこともないおしゃれな離乳食まであった。
歩那は悦んで頬張り、食べ終わると一日はしゃぎすぎて疲れたのか直ぐにうとうととした。

歩那が昴から離れないので寝かしつけを任せ、食事の片づけは花蓮が担当した。
歩那は甘えてベッドで寝たくないと愚図った。
昴は抱っこをしたまま、歌をうたいゆらゆらと揺れる。

二十分もそうしていると歩那は寝入った。
ベッドに下ろしたところでちょうど花蓮も片付けが終わり、ふたり分のお茶を入れて休憩となった。

「今日はありがとうございました」

昴は笑ってはいるものの、ずっと言葉が少なかった。

「花蓮もお疲れ様。楽しかったね」

「ええ、本当に幸せなひと時でした。昴さんが楽しんでいただけたなら、わたしもうれしいです」

山根と話し、昴に対して誠実にと誓ったことを思いだす。
今が話すべきタイミングだと思った。

血のつながりがなくても家族になろうとしてくれたことに、とても感謝している。
だからこそ、もう引き延ばしてはいけない。

(“言えない”だなんて、わたしのエゴだ)

「昴さん、お話があるんです……」

コップを置いて、背筋を正して神妙に切り出す。
頭の中で何度も練習したことを、誤解ないように伝えたい。
しかし、口を開いた瞬間、昴が天を仰いで顔を覆った。

「あー……聞きたくない。だって悲しい話だろ。ずっと、そんな気がしてたよ。花蓮が区切りをつけるなら今日なんだろうなと思ってた」

どんなに忙しい時でも、花蓮のことをぞんざいに扱うことがなかった昴が、視線を合わせてくれなかった。

「俺じゃ、駄目だった? 夫として愛せない?」

「昴さん……あの……」

「花蓮の育った環境を考えると、実の父親ではない人と家族になるのは不安があるのかもしれない。でも、俺は歩那のことも、花蓮と同じくらい愛しているよ。血の繋がりはなくても、誰が見ても誇れる父親になってみせる。俺はふたりを幸せにしたい! それで、ふたりがいてくれたら俺も幸せだって思う」

ずっと応えることが出来ないでいるのに、それでも好きだと言ってくれる。
いっそのこと、はっきりしろって怒ってくれたら楽なのに。
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