愛されていたとは知りませんでした。孤独なシンデレラは婚約破棄したはずの御曹司に秘密のベビーごと溺愛される
ロマンスファンタジー映画のよう。

伝えたかったのに伝わらなかったもどかしい気持ちには身に覚えがあって、夢を反芻すると胸がずくんと痛む。
人恋しくて、どうしようもなく甘えたい気持ちになった。

思い切り抱きしめて頭を撫でてもらいたいだなんて、子どものようなことを思う。
夢で会えたのは、別れも告げられずに会えなくなった男。

「昴さん……」

彼を想って、歩那を引き寄せ温もりを堪能した。

八年も付き合ったのに、とうとう愛してもらえることはなかったけれど、それでも花蓮はずっと思いを寄せていた。

(会いたいな……)

叶う筈のない願い。

せめて夢だけでもいいからもう一度合わせてほしいと、ぎゅっと目を瞑った。
< 4 / 129 >

この作品をシェア

pagetop