愛されていたとは知りませんでした。孤独なシンデレラは婚約破棄したはずの御曹司に秘密のベビーごと溺愛される

王子はチャンスを逃さない

花蓮に会いに来たのが、今日で良かったと昴は何度も思った。

三週間ほどの期間が開いたがやっと時間を作ることができ、仕事終わりに急いで駆け付けたところであった。

これほどまでに時間が空いてしまったことに、仕事を詰め込んだ但馬を恨んだが、トラブルを未然に防げたことに関しては、このタイミングでスケジューリングしてくれたことに、ボーナスをはずんでやりたいくらいだ。

話を聞けば、男は花蓮が金銭面に余裕がないのを知って、卑猥な行為で金を支払うと誘ってきていた。
あと一分遅かったら部屋に連れ込まれていたかもしれない。

腕の怪我は男のせいではなく仕事で負ってしまったとのことであったが、治るまでは生活も不便だろう。腫れ上がり痛々しい。怪我が悪化したのは、男ともみ合ったからだと思っている。

「あの男……なんとかしないとな」

(汚い手で花蓮に触れやがって)

そんな怒りとは別に、舞い込んだチャンスに浮ついた気持ちも湧き上がっていた。
きっかけは最悪だったが、結果として花蓮が同じ屋根の下にいるのだ。

慎重に、大切に付き合いやっと手に入ると思った矢先に姿を消した思い人。
目の前にいるだけで愛おしくて、このまま、二度と逃げられないように閉じこめてしまいたいとさえ思う。

寝不足そうな目。以前より細い腕。
もうそんなに頑張らなくても良いと、甘やかしてやりたい。

昴はこの三週間、自分はどうしたいのかずっと考えていた。
結論は、例え花蓮にほかの男の子どもがいようが、変わらず愛しているということだ。

なんとかしてやり直したい。
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