【完結】鍵をかけた君との恋
 夏休み最終日。陸は私を水族館へと連れ出した。

「地元以外でするデート、初めてだね」
「俺んちばっかじゃ飽きるだろ」
「うん」
「おい」

 あははと笑って、手を繋ぐ。


「けっこういっぱい、魚いるんだなあ」

 青白く包まれた館内の、一番大きな水槽の前。立ち止まった陸が言う。

「ちっさい時来たよな、ここの水族館。乃亜んちと俺んちで」
「そうだね。懐かしいね」
「暗いからはぐれないようにって、手ぇ繋がされてさ」
「そうだったっけ?」
「え、覚えてないの?ショック」
「そんな昔のこと、覚えてないよー」
「たぶんあれが、乃亜と初めて手を繋いだ日なんだよなあ」

 結ばれた手をぶらんぶらんと揺らせながら、「こんな風にしてたじゃん」と、彼は私の記憶を探ってくる。

「お、覚えてない」
「んだよ、もう」

 陸は一体、いつから私を好いてくれていたのだろう。

「そういえば双葉がね、今度陸に会いたいって」
「双葉?」
「私の高校の友達だよ。可愛いなら男避けになるねって陸が言ってた子」
「あー。あの子」
「双葉と陸は同志だから、絶対気が合うと思うんだっ」

 つい先日、泣きながら私に電話を寄越した双葉。てっきりまたあの彼にフラれたのだと思い、慰めにまわろうとすれば、なんと吉報だった。

「同志って何。似たもの同士とかの同士?」
「さあ」
「ああ、顔がいい者同士か」
「鏡見てから言って」

 大好きな双葉に早く、大好きな陸を紹介したい。
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