鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 マリアベルの王立学院入学から2年近い時が経ち、アーロンの卒業が近づいたころには。

「……アーロン様」

 馬車の中で二人きりになると、マリアベルのほうから、ぽすん、と、アーロンの肩に身体を預けてくるようになったりもした。
 彼女がアーロンに対して「好き」とはっきり口にすることは少ないが、こういった行動や表情から、気持ちを読み取ることはできた。
 まだ戸惑いはあるようだが、彼女は元々、アーロンのことが大好きだったのである。
 その感情に、恋、という名前がついていなかっただけ。気が付いていなかっただけ。
 婚約者、という関係を与えられ、他の女性への嫉妬心も感じるようになったマリアベルは、彼女なりのやり方とスピードで、アーロンに自分の気持ちを伝えるようになっていた。

 幼い頃から大好きだった子にそんなことをされたアーロンは、もちろん幸せいっぱいで。
 いつだかに彼女が言っていた「あなたの厚意に報いたい」という話は、とっくに達成されているのだが、マリアベルがそのことに気が付いているかどうかは、定かではない。

 このソルシエ王国の貴族は、20歳前後で正式に婚姻を結ぶことが多い。
 マリアベルとアーロンも、互いに学院を卒業した数年後には、結婚することになるだろう。


 こんなふうに、触れ合う機会の増えた二人だったが、まだ、一線は超えていない。
 学生とはいえ、想い合う婚約者なのであれば、既に関係を持っている者たちも存在はする。
 けれどアーロンは、正式に結婚するまで待つつもりだった。
 マリアベルが自分に対して嫉妬心や好意を見せるようになるまで、10年ほど待ち続けたのだ。
 今更、急いてことを進めるつもりはなかった。
 彼女の自己評価の低さについても、これからたっぷりと時間をかけて、きみは素晴らしい人だ、と伝えていくつもりである。
 想いは、通じ合ったのだ。
 急ぎすぎて彼女に負担をかけたりせず、今まで通り、ゆっくりと進んでいけばいい。

 アーロンがそんな考え方だったため、学院卒業後から結婚までのあいだのマリアベルは、なかなか手を出してくれない彼に悶々とすることになり、これまでとは立場が逆転するのであるが……。
 それはまた、ちょっと先の未来のお話。
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