鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 アーロンは、後輩となるマリアベルに、毎年行われるパーティーの説明を行った。
 春、一年生の入学直後に、学院ではパーティーが開かれる。
 一年生の女子が主役の、デビュタントの予行演習の場だ。
 男子にとっても、この先に向けての訓練の機会となる。

「あくまで予行演習だから、白いドレスもエスコートも必須じゃない。貴族じゃない子もいるしね。けど、ベルは卒業後にデビュタントを控えてるわけだし、せっかくだから練習の場として使っておいたほうがいいと思うんだ」
「たしかにそうですね……。でも、ドレスにエスコート、かあ……」

 どちらも用意できるあてがなく、マリアベルはうーんと顎に手をあてた。
 アークライト家にお呼ばれした今日は、水色のドレスを身に纏っている。
 これはマリアベルの一張羅だが、さほど値が張るわけでもない。
 悲しいかな、公爵家のアーロンから見たら、安物かもしれない一着である。
 パーティー用の白いドレスを追加で用意できるかどうかは、ちょっとわからなかった。

「その感じだと、パートナーはまだ決まってなさそうだね。よかったら、僕にエスコートさせてくれないかい?」
「いいのですか? 他に頼める人もいないので、こちらとしては大変ありがたいお話ですが……。その、アーロン様にお願いしたい他のお嬢さんもいるのでは?」
「今のところ、そういった話はきてないよ。だから大丈夫」
「そう、ですか……?」
「うん。きみが嫌でなければ、ぜひ」
「嫌だなんて! そんなこと、あるわけないです! ただ……」
「ただ?」

 恥ずかしさで、マリアベルはちょっともごもごしてしまった。
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