鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~

勘違いと、これから始まるアプローチ

「僕と、結婚して欲しい」
「はい?」

 パーティーも終えて一安心!
 最初の山場は超えたわね!
 とほっとしていたマリアベル。
 隣に座る人からの突然のプロポーズに、こんな言葉しか返せなかった。

 ケッコンシテホシイ?
 けっこんしてほしいとは、どういう意味だろう。
 聞き取れた言葉は間違っていないと思うのだが、その意味が理解できない。

「あの、アーロン様。けっこんしてほしい、とは?」

 けっこんしてほしい、という言葉の意味がわからなかったので、そのまま聞き返した。
 するとアーロンは、ずうんと肩を落とし、両手で顔を覆いながら、

「結婚して……」

 と弱弱しく言った。
 質問への返事があったはずなのに、マリアベル、さらなる混乱に陥る。

「ええと……? 結婚して、というのは、結婚して欲しい、という意味ですか?」
「結婚して欲しいという意味です」
「?」
「結婚して……」
「それはつまり?」
「僕と結婚して……」
「???」

 けっこん? けっこん? なんで?

 マリアベルも鈍すぎるかもしれないが、この状況で突然のプロポーズでは、「え?」となってしまうのも、無理はないかもしれない。
 貴族同士らしく、家を通してお話とか、婚約を見据えて会うとか、そんなことは一度だってしていないのだ。
 まあ、二人は幼いころから何度も何度も、それはもう数えきれないぐらいに会っており、仲もよく、アーロンがマリアベルに懸想していることもバレバレで。
 周囲の者からすれば、婚約内定も同然だったのだが。
 アーロンがマリアベルに向ける恋情に気が付いていないのは、マリアベル本人ぐらいのものかもしれない。
 マリアベルは、幼いころからアーロンに愛され続けているものの、婚約といった話は一度もされていない。
 ゆえに彼女は、ちょっと感覚が麻痺していた。
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