鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
1章 突然のプロポーズまでの道のり

借金と才能にまみれた伯爵令嬢

「すまない、マリアベル。破産した」
「はさん」

 16歳も近いマリアベルは、幼いころに聞いた父の言葉を覚えている。
 おそらくだが、時期的に5歳のときのことだろう。
 そんな年齢で「はさん」の意味などわからない。
 しかし、父のまとう雰囲気や、領地も家も色々と様子がおかしいことなどから、なんかやべーことが起きている、とは理解できていたようだ。
 領民は家に引きこもってるし、外を見れば魔物が暴れてるし、自分も外に出してもらえないし、家財はどんどんなくなるし、いかつい人たちがよく家を出入りしてるし。
 いくら5歳でも、異常事態なことぐらいはわかる。
 今でも思い出せるのだから、子供でも「わあやばーい」と感じ取ったのだろう。


 マリアベルが5歳のころ、マニフィカ領で魔物が大量発生した。
 一般の人でも倒せるような小型で弱いものから、兵を何人も集めても討伐に苦労する大型のものまで。
 それはもう、様々な種類の魔物が出まくった。
 マリアベルの父の奮闘により、死者こそほとんど出なかったものの、被害は甚大なものだった。
 外に出れば魔物に襲われ、ときには家の中にまで侵入されて。
 人々が怯えて家に引きこもるうちに、作物や家畜は魔物に荒らされた。
 
 マニフィカ領の兵だけではとても対応しきれず、他の貴族や国に応援を要請。
 それでも足りず、傭兵だって雇った。
 外に出ることもままならなくなった領民のため、日用品や食材を家に届け、助けた。
 なんとか騒ぎが収まったころには、金もなければ屋敷に絵画や壺の1つもなく、領地の畑も家畜もぼろっぼろで。
 領民からの感謝と信頼と、借金以外になにも持たない貧乏伯爵家が爆誕していた。
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