鮮血の妖精姫は、幼馴染の恋情に気がつかない ~魔法特待の貧乏娘、公爵家嫡男に求婚されつつ、学園生活を謳歌します~
 ちょっと寂しそうに微笑むマリアベルに、コレットの胸がつきりと痛んだ。
 同じ特待生で、お弁当仲間で。だから近しい存在のように感じてしまうが、マリアベルは貴族のご令嬢。
 やはり平民のコレットとは、婚姻に関する考え方や覚悟が違うのだ。
 マリアベルはきっと、家同士で話がまとまったのなら、よく知らない男の元にだって嫁ぐのだろう。
 この学院に入ってから、顔も知らない相手と結婚した貴族の話だって聞くようになった。
 きっとマリアベルにも、そうなる覚悟はあるのだ。
 だが、それはそれとして、コレットは「そういうことではなく……!」という気持ちにもなっていた。

 コレットが聞きたいのは、マリアベルという個人がアーロンとの結婚を受け入れられるのかどうかだったのだが、「貴族だから大丈夫!」と回答されてしまった。
 もう少し話を聞きたいところだったが、魔研のメンバーがマリアベルに声をかけたことで、話は中断された。
 魔法の実技を披露して欲しい、と連れ出されるマリアベルに、いってらっしゃい、とコレットは手を振って見送る。

 アーロンの気持ちは誰がどう見ても明らかなのに、肝心のマリアベルは魔法使いとしての自分目当てのプロポーズだと思っていて。
 けれど、名門公爵家の嫡男ともなれば、恋心だけで動くわけがないと思われるのも、仕方がない気がして。
 マリアベルが彼との結婚そのものを嫌がる様子がないのも、彼に気持ちがあるからなのか、貴族としての意識があるからなのか、いまいち読めなくて。
 コレット・コルケットは、貴族たちのことがやっぱりよくわからない。
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