炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
「子どもだった俺は、フルラ国にもぐりこむためだけの、ただの道具だったのか? 親や国に、ただ利用されるだけの、可哀相な子どもだったか?」
『僕、父上よりも、オリバーに褒められたい』
――本心だった。俺はあんたを慕っていた。
「魔女が俺をいじめるようだったら、やっつけてやると言ってくれた」
――寂しくて、不安に思う俺の頭をやさしく撫でてくれた。あんたの広い胸に抱きしめられるのが、好きだった。安心できた。包みこむように握ってくれた手は大きくて、オリバーが父親だったら良かったのにと、何度も思った。
「俺にかけてくれた言葉は、向けてくれた眼差しは、温もりは、全部、嘘だったのか?」
叔父の肩を掴む手が震える。それを誤魔化すために力を入れた。
「なあ、オリバー・クロフォード。答えろ! あんたは、俺のことを……ッ!」
――少しは、好きでいてくれた?
はらりと白い雪がオリバーの頬に落ちる。
裏切られたのが哀しかった。憎らしかった。大切な人を奪われたのが悔しくて、何度も殺意が頭をもたげた。だけど同時に、どこかで信じたいと、なにか理由があるんだと思う感情があった。
――どうしようもない人なのに。俺にとってこの人は、ミーシャの言うとおりオリバーは、……かけがえのない、大切な人だ。
リアムは感情が溢れそうで、ぐっと唇を引き結んだ。その時だった。
「リアム、危ない!」
ミーシャの叫び声と一緒に、氷を割る激しい音が右側から聞こえた。
流氷の結界の氷が隆起し突然割れたかと思うと、額に蒼い魔鉱石を持つ氷の狼が現われ、リアムに向かった飛びかかってきた。大きな口を開け、鋭い牙が眼前にせまる。
咄嗟に狼の口に剣を突き刺した。しかし、狼の勢いは止まらない。前足の尖った爪がリアムの顔や目に襲いかかる。避ける暇がない。あと数センチで目に食いこむという刹那、リアムの視界は塞がれた。
身体が後ろへと傾き押しつけられる。氷を操る一族なのに、リアムの目を塞ぐ大きな手は温かった。
『僕、父上よりも、オリバーに褒められたい』
――本心だった。俺はあんたを慕っていた。
「魔女が俺をいじめるようだったら、やっつけてやると言ってくれた」
――寂しくて、不安に思う俺の頭をやさしく撫でてくれた。あんたの広い胸に抱きしめられるのが、好きだった。安心できた。包みこむように握ってくれた手は大きくて、オリバーが父親だったら良かったのにと、何度も思った。
「俺にかけてくれた言葉は、向けてくれた眼差しは、温もりは、全部、嘘だったのか?」
叔父の肩を掴む手が震える。それを誤魔化すために力を入れた。
「なあ、オリバー・クロフォード。答えろ! あんたは、俺のことを……ッ!」
――少しは、好きでいてくれた?
はらりと白い雪がオリバーの頬に落ちる。
裏切られたのが哀しかった。憎らしかった。大切な人を奪われたのが悔しくて、何度も殺意が頭をもたげた。だけど同時に、どこかで信じたいと、なにか理由があるんだと思う感情があった。
――どうしようもない人なのに。俺にとってこの人は、ミーシャの言うとおりオリバーは、……かけがえのない、大切な人だ。
リアムは感情が溢れそうで、ぐっと唇を引き結んだ。その時だった。
「リアム、危ない!」
ミーシャの叫び声と一緒に、氷を割る激しい音が右側から聞こえた。
流氷の結界の氷が隆起し突然割れたかと思うと、額に蒼い魔鉱石を持つ氷の狼が現われ、リアムに向かった飛びかかってきた。大きな口を開け、鋭い牙が眼前にせまる。
咄嗟に狼の口に剣を突き刺した。しかし、狼の勢いは止まらない。前足の尖った爪がリアムの顔や目に襲いかかる。避ける暇がない。あと数センチで目に食いこむという刹那、リアムの視界は塞がれた。
身体が後ろへと傾き押しつけられる。氷を操る一族なのに、リアムの目を塞ぐ大きな手は温かった。