炎の魔女と氷の皇帝*転生したら弟子と契約結婚をすることになりました*
思わず身体を強張らせたが、彼は平然としたようすで「いいから早く呼べ」と言った。

 とまどいながらも、「炎の鳥よ、おいで」と大きな声で呼んだ。
 ろうそくの火が、かっと赤く大きくなると、すぐに鳥の形になった。
 翼を広げ、ミーシャのもとへ飛んでくる。小鳥サイズの炎の鳥を手の甲にとまらせた。

「……みなさま、これが炎の鳥です」

 引きつった顔で静まりかえる人たちに、よく見えるように手を向ける。愛らしく炎の鳥は小首をかしげた。場はさらに凍りついたように静まりかえった。

「……ずいぶんと小さいな。こないだ見せてもらった炎の鳥よりも小振りだ」

 リアムだけが余裕顔で観察するように、炎の鳥を見つめる。

「この大きさが限界です……」

 ノアが興味深そうにしているが、近づくのをビアンカが遮った。

「陛下の仰せのとおり、炎の鳥は、災いなどもたらしたりしません」

 ミーシャはビアンカ、そして列席者に視線を向けた。

「氷の国でも、炎は生活に欠かせない大事なものですよね。火は美味しい料理を作るのに欠かせません。凍えている人がいれば暖められます。生きていくのに必要で、命を救う神聖なものです。炎の鳥は怖いものではありません」

 リアムが手を伸ばしてきたので、彼の手に炎の鳥を移した。

「令嬢の言うとおりだ。炎を恐れる必要はない」

 ミーシャはろうそくの火から次々と小さな炎の鳥を生みだした。会場の天井近くをぱたぱたと羽音をたてて飛び回っている。
 火を恐れて姿勢を低くする人、ちらちらと火の粉を降らせる姿がきれいで、見入る人とさまざまだ。

「炎の鳥は、ふつうの火より高温です。ですが、燃やす対象を選べます。それにこの地は陛下の力『流氷の結界』があるため、私には、これ以上大きな炎の鳥を呼びだすことはできません」

「いくら炎の鳥と言っても、この程度の炎では国を燃やすことはできないな。だが……」

 リアムは「失礼する」と言って、ミーシャを軽々と抱きあげた。
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