元皇女なのはヒミツです!

33 定食屋の訪問者

「いらっしゃいませ……アメリア様! 王た――」

「しっ」フレデリック様は人差し指を唇に当てた。「今日は僕はただのフレディなんだ」

 私はコクリと深く頷いて、

「い、いらっしゃいませ。アメリア様……ふ……フレディ、様……」と、お辞儀をした。

 まさかこんな形で彼の愛称を呼ぶ日が来るなんて……。恥ずかしくてちょっと顔が火照った。

 ここは私の働く庶民向けの定食屋。そこにお客として王太子と公爵令嬢。うーん、釣り合わないわ……。
 私は二人を奥の座席まで案内した。お忍びだからあまり目立たない席がいいわよね。

「おや、リナのお友達かい?」

 そのとき厨房からマーサさんが顔を出した。彼女はこの定食屋の女将さんで、私にいろいろとお世話をしてくださっている方だ。リーズの庶民の暮らしについてもたくさん教えてもらっている。
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