元皇女なのはヒミツです!

4 新たな目標

 旅は順調だった。

 生まれたときからずっと宮廷生活で、そのあとはアレクセイさんの家から一歩も外に出なかったので最初はおっかなびっくりだったけど、一度勝手が分かればあとはもう大丈夫。買い物も気軽にできるようになったし、辻馬車や定食屋で近くに座っている人たちと会話もできるようになった。当然彼らは全員平民で、私の知らないことを多く知っているのでとても有意義な時間を過ごさせてもらった。
 あと、悲しいけど平民にも悪意を持って近寄ってくる人間がいるということも知ったわ。笑顔で近付かれて危うく財布を取られそうになってしまった。親切な冒険者の方に助けてもらって事なきを得たけど、誰にでも心を許すのは危険なのだと勉強になった。
 ……ま、この辺は貴族と変わらないわね。彼らも美しい笑顔の下には獰猛な悪意を隠しているものね。



「ここが……リーズ……!」

 出発から約一月、私はついにリーズ王国へ足を踏み入れた。
 最初に訪れた場所は国境の小さな町だったからリーズに着いたって実感が湧かなかったけど、だんだんと王都に近付くに連れて胸が踊った。

 リーズ王国は大陸の西側にあって、温暖な気候で寒冷のアレクサンドル連邦国よりずっと暖かい。
 今の季節は冬でリーズの人々は寒い寒いって口にしているけど、私からしたら秋くらいの気温だ。ターニャさんから真冬用の外套は必要ないって言われて渋々置いてきたけど正解だったわ。あんな毛皮まみれの熊みたいな外套をここで着ていたらきっとお笑い草だったと思う。
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