元皇女なのはヒミツです!


「あ、セルゲイいた」

 ついに公爵令息の麗しい顔が目に飛び込んできた。彼は背が高いから目立つわね。ずっと動き回っていたアメリア様もやっと立ち止まる。
 人混みを掻き分けて更に前へ進むと、

「…………」

「…………」

 セルゲイも令嬢たちに囲まれていた。
 しかも、まだ正式な婚約者のいない彼にはフレデリック様以上にその人数が多くて、私たちの入り込む余地はこれっぽっちもなかった。アメリア様を見ると、ちょっと涙目になっていた。

「これじゃあ、全然近付けそうにありませんね。出直しましょうか」

「うん……」と、彼女はしょんぼりと答える。ライバルは多いですね、これから頑張りましょう……という気持ちで私は彼女の背中をトントンと優しく叩いた。

「そうだ、折角だからアメリア様と同年代の方々と交流を持たれてはいかがですか?」

「えっ!?」アメリア様は一瞬目を丸くしてから、そしてみるみる顔を曇らせた。「そんなこと、どうやって……」

 彼女はその身分の高さからかフレデリック様などの年上の貴族とは面識があるが、同年代の貴族の子女たちとはほとんど関わりがないらしい。そこで、今日は同年代の友人を作らせてくれと公爵閣下から仰せつかっているのだ。

「簡単ですよ。挨拶をして話しかければ良いのです。では、早速参りましょうか!」と、私は尻込みする小さなお姫様の手を取って彼女と同年代くらいの子供たちが集まるテーブルへと向かったのだった。





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