元皇女なのはヒミツです!

 部屋の扉の取手に手を触れて、オリヴィアは少しのあいだ逡巡する。
 人の物を盗むなんて、いけないことだ。ましてや大切な親友の物なんて……。

 ――でも、本当に友達なの?

 にわかに、胸の中でフローレンスの声が鳴り響く。

 ――リナさんはあなたを騙していたのでしょう?
 ――だったら、それ相応の報いを受けてもらわないと。
 ――大丈夫、あなたは悪くないわ。
 ――わたくしに任せなさい。

 ついに黒い影がオリヴィアを包み込んだ。そしてと彼女の肉体に滲むようにじわじわと浸食していく。
 そうよ、悪いのはリナのほうよ。わたしは裏切られた被害者。だから彼女はなにをされたって非難する筋合いはないわ。

 胸の音がどくどくと高鳴る。
 彼女はそっと取手を回した。


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