元皇女なのはヒミツです!
「リ、リナ……。あんなことを言って、どうするの?」
グレースたちが立ち去って、オリヴィアは不安げに私に尋ねた。
「パーティーまでに踊れるようになればいいのよ。良かったらダンスくらい私が教えるわ」と、自信満々に私は答える。
「えっ? リナって、平民なのにダンスが踊れるの?」
オリヴィアは目をぱちくりさせた。
「あっ……」
自分が放った言葉の意味に気付いて凍り付いた。平民が貴族のダンスを踊れるなんて、前代未聞だ。
「えっと……その……」
私は慌てふためいて、しばらく二の句が継げなかった。
「リナの母親が伯爵家で働いていたことがあるんだよ。な?」
出し抜けにセルゲイが現れて、助け舟を出してくれた。意味深長に目配せしてくる。
私ははっと我に返った。そ、そうだわ! その設定で行きましょう。
「そ、そうなの! は、母が帝国時代に伯爵令嬢のメイドをやっていて、気まぐれなご令嬢だったからダンスの練習相手をメイドにもやらせていたのよ。母は運動神経が良かったから。そ、そこで覚えて娘の私にも教えてくれたってわけ」と、私は早口で即興の出任せをつらつらと並べた。顔が引き攣った。
「まぁ! そうだったのね! 凄いわねぇ!」
純粋なオリヴィアはすっかり私の話を信じ込んだようで、期待のこもったキラキラした瞳で私を見た。
反対にセルゲイはギロリと私を睨み付けてくる。お、怒ることないじゃないの! でも、まぁ今回も彼に助けられたわ。あとでお礼しないと。