元皇女なのはヒミツです!




「お、頑張っているな」

 ある日、担任のアルフィー先生が練習に顔を出した。
 先生は入学した頃から平民の私をなにかと気にかけてくれて、頼りになる存在だ。グレースたちにも何度も注意をしてくれている。まぁ、全くといって効果がないのだけれど。

「先生、オリヴィアったらステップも踏めなかったのに、もうこんなに上達したんですよ」と、私は得意げに彼女のダンス姿を見せびらかせた。

「リ、リナ……! 恥ずかしいわ」

「ほう、凄いじゃないか! ……あれ?」

 先生は首を傾げた。

「どうしたんですか?」

「いや……」と、先生は少し考える素振りを見せてから「そうか! リナ君とセルゲイ君の教えているダンスは帝国式だったな。リーズでは少し異なる部分もあるんだよ」

「「あっ……!」」

 私とセルゲイは顔を見合わせた。

 すっかり忘れていたわ! ダンスといっても国ごとに特色があるのよね。リーズ式のダンスは王太子妃教育のときに覚えればいい、ってなにも勉強していなかったわ。

「どうしよう!」

 私は慌てふためいた。
 困ったわ。このままだとグレースたちに馬鹿にされちゃう。

「じゃあ、良ければ私が教えよう」と、先生はおもむろに上着を脱ぎ始めた。

「いいんですか?」

「もちろん。こんなことで良ければ喜んで協力するよ。大陸中の国は基本は帝国に倣っているから君たちもすぐに覚えるだろう」

 こうして、私たちは先生も交えてパーティー当日までダンスの特訓に明け暮れた。

 アルフィー先生がたまたま見学に来てくれなかったら、とんだ失態を晒すところだったから本当に良かった。先生には感謝してもしきれない。

 見てなさいよ、グレース。優雅に踊るオリヴィアを見せ付けて鼻を明かしてあげるわ!

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